ヴァリエテSAITAMA暫定版

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【五楼'sトーク】音楽はダウンロードするよりCDで購入した方が愛着もひとしお〜大宮・more records の存在感

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近年、音楽の買い方が変わってきた。iTunesなどによりダウンロードする買い方が主流となり、CDショップで買うという人が少なくなってきた、ような気がする。

思い出話を少々。

私が音楽を聞き始めた70年代、音楽はレコード店で購入していた。どんな小さなマチにも存在していたレコード店は、音楽好きにとっては"聖地"であり、少ない小遣いを握りしめ、あれやこれやと思案しながら、えいっとばかりに購入し、家に帰ってレコード針を落とし聞き入る....それが楽しみだった。80年代後半に入り、CDが普及し始め、レコード特有の「スクラッチノイズ」混じりの、あの独特感は無くなってしまったが、レコードからCDに品揃えが変化しつつあったレコード店で「買う」という行為自体は変わらず、ジャケットを見て、時には試聴(レコードではなかなかできなかった)しながら、購入したものだ。

時代を少しだけ元に戻す。80年代の初期、渋谷に現れたタワーレコードにより、国内盤より安い、輸入盤がクローズアップされた。しかし、タワーレコードよりも私が驚いたのが、六本木WAVEの登場だった。 当時私は、「雑食的音楽生活」を送っていた。貸しレコード店でバイトをし、貸しレコード店で運営するミニFM局のDJをやり、さらにはイベントで"廻す"ということもやっていたから、常に「新しい音」を追い求めていた。特に、ニューオーダーやデペッシュモードなどのUKインディーズに凝っていたこともあり、WAVEができる以前は、渋谷のCISCOや代々木のイースタンワークスなどへ日参した。或いはディスコへ行く前に六本木のウィナーズで12インチシングルを買い漁る、なんてこともやっていた。「ニューミュージカルエクスプレス」のチャートと睨めっこし、「フールズメイト」を愛読するというのも日常だった。 そんな生活を送っている最中、WAVEが現れた! あの、セゾングループがレコードショップを、しかもかなり品揃えもすごいと評判になっていた。確かに品揃えは凄かった。しかし、もっと凄かったのが、仕掛けなのである。「ノイエドイチェヴェレ」というムーブメントを覚えているだろうか? アインシュテンテンデ・ノイバウテンや、D.A.F、デアプランなど、当時の西ドイツ発のニューウェーブミュージックを、我が国ではWAVEが仕掛けたのだ。その後90年代に入り、所謂「渋谷系」が流行った時も、WAVEは存在感を放ち続けていたが、だんだんと翳りが見え始め、現在WAVEは存在しない。コアに音楽を聞き続けている仲間内でWAVEを懐かしむ声がよく上がり、私自身も懐かしく思っていたが、あのWAVEのエッセンスを持つCDショップが大宮にあるのだ!

大宮区役所の通りを市民会館おおみやへ向かう途中、more recordsはある。階段を上がり店内へ入ると整然と並んだ「お宝」が目に入る。かつて味わった懐かしい感じと、斬新さが入り混じった、なんとも言えない雰囲気が漂っている。お店の人も「ただもんじゃない」感を醸し出している!その「ただもんじゃない」感漂うmore recordsの橋本貴洋さんは、WAVEにいたそうだ。やはり! 品揃えは独特で、フィンランドのジャズなど、ラジオではまずオンエアされることもなく、iTunesにもまずラインナップされないだろうという作品が並んでいるのだ。昔は個性的なレコード&CDショップが渋谷や下北沢には当たり前に存在していたが、大宮にそんな個性的なショップがあるなんて、素敵じゃないかと私は思うのだ。

予定調和的と言われる昨今の音楽シーンだが、いつかその「予定調和的」が飽きられる時代は来る。音楽もファッションも、常に進化もすれば、変化もし、或いは繰り返されもした。more records は、虎視眈々とその時代の訪れを待っているのか、実は仕掛けているのか....⁉︎

(五楼)

http://morerecords.jp/